2014年07月14日
イエローストーン 研修レポート (マツヤマ)

2014年7月
株式会社マツヤマデザインの半年掛かりの一大プロジェクト「アメリカ イエローストーン国立公園」への研修ツアー。
地球の反対側に行ってきました。飛行機で14時間。セントレア→成田→デンバー→ボーズマン→レンタカーという乗り継ぎだらけのハードなツアーでした。

僕は三度目となるイエローストーンでしたが、前回二年前に行ったマサに加え、オオムラ・タカノと前回お留守番だった二人と、ゼキさん、ノリスケというゲストも加えての6人での旅となりました。
株式会社マツヤマデザインは現在四名のスタッフで運営しています、小さいながらも毎日更新しなければならないホームページや、頂いて取り掛かっているデザインの仕事もあり、「全員で」アメリカに一週間近く行くとなるとそれなりに、仕事の段取りや、いつもお世話になっているお客様への迷惑をかけないようにと考えると、それ相応の準備や、仕事の穴を埋める為にシフトを組まねばなりませんでした。
まず、チームを3つに分けました、前半組み、後半組み、全日程組みです、前半組みと後半組みは、週末アメリカで合流、全日程組みはツアーを通して旅の運営を司りました。
全日程:ゼキさん・ノリスケ・マツヤマ
前半:マサ
後半:オオムラ・タカノ
(前半チーム)
(後半チーム)


ゼキさんは、いつものように素敵な写真を撮ってくれました、ノリスケはチビッコながらも英語が堪能で頼りになりました。
マサは一緒に出発して一人帰国し、仕事を回してくれました。オオムラ・タカノは仕事を片付けて二人で飛行機に乗り込み、アメリカで合流してくれました。

僕は、この研修を通して、スタッフ一人一人に、「コレ」を感じて欲しい、といった具体的な目標は正直持っていませんでした。でもきっと、彼らは彼らの思いや胸の中で、様々な事をきっと感じ成長するに違いない…という漠然とした自信がありました。
なんというか、たぶん、僕は自分のスタッフのそういう点を信じているんだと思います。根拠は全くありませんが(笑)
「あいつらならきっとナニカ感じて、今後の役に立てるだろきっと…」という感じです。
僕の仕事はデザイン会社。広告を製作しています。
大雑把に言えば「人にモノを伝える仕事」です。
今回僕が思ったことの一つに
「人にモノゴトを伝える事は、とても難しいことで、それは言葉でも写真でも、動画でも『全ては伝わらないものだ』」。ということがありました。
ウイスキーを造る際に、樽の中一杯に詰めて数年寝かし熟成を待つと、封を開けた時、樽の中身は少しだけ減っている…。それをウイスキーつくりの職人さん達は「天使の取り分」と呼ぶ。という話を開高建の書いた物の中で知った記憶があります。
僕が数度行った、アメリカの話しや写真を、スタッフに想いを込めて話し写真を見せて伝えたこと、
それと、現地に一度行くことで改めて自分の身体で体験し、知ったこと…。
その二つの体験の『差』がきっと「天使の取り分」になるのではないか?
伝え切れなかったこと、どうしても伝わらなかったこと…
「人は、人に100%の感覚情報を伝えることは出来ない」それを認めて初めて
「諦めること、それを認めた上で工夫し、努めること」を感じてもらえる気がしました。
僕たちは「人にモノゴト・感覚を伝える商売をしている」からこそ
伝えることが出来ないことがある、という不可能な事を身体で体感することは決して無駄では無い気がします。
不可能な事を知れば、逆に「可能なこと」もきっと見えてくるのでは無いかと思うからです。
その誤差のチューニングと把握は、きっとこれからの仕事に役に立つのではないかと思っています。
ウイスキー職人は、100仕込んだウィスキーが出来上がる時には100以下になる事を知っている。
その上でウィスキーを作る為に、日々試行錯誤を重ねます。消え去ってしまう部分は天使に捧げる大切なものです。
僕達も、100の想いと表現が、100以下になることを絶対的事実という体感として捉え、
「伝わりきらぬことがある」ことを知り、表現する上での「天使に捧げる」部分を認めた上で「伝えられること」に試行錯誤を重ねることが出来たら素敵な事だと思いました。


今回、会社の研修としてアメリカに行くことを数人の友人知人に伝えると、「マツヤマデザインさんはリッチだねぇ」なんて事を言われるのですが、お金は実はそれほど必要ではありませんでした。
一番安くなる数ヶ月前のタイミングで超格安航空チケットを買いました。
それ以外の費用はレンタカーと「イエローストーンホライゾンズ」のコテージでの共同生活、それに二泊の自然世界遺産の中でのキャンプ、全て自炊、日本から持ち込んだテントと寝袋です。それらを計算すると、14万2129円でした。期間中のレンタカーを入れてです。会社から5万円補助を出して、残り9万円を同行6人で割ると全日程組みは一人2万円(*3人で6万円)、前半後半組みは一人1万円(*3人で3万円)の個人負担です。



みんなで互いに調理しゴハンを食べて、レンタカーを交代で運転し、

慣れない外国でキャンプする体験が、格安航空券代金以外は、会社は5万円、個人は1万円~2万円の負担なら安いと思いません?不安とワクワクも全部山分けです。
(ガスカートリッジが飛行機で持ち込めなかったから、MSRのウィスパーライトインターナショナルでガソリン使用、本当に役に立ちました)
僕は、お金より、それを使う「時間」を取れるかどうか?が本当に大切だと思います。会社として、こういった研修が出来るのも、理解し、協力してくれるお客様や業者さんがあってのコトだと心から感謝しています。
それらの方にできる最大の恩返しは、「たくさん学び、気付き、価値あるものを提供し、喜んでいただく事」だと思っています。


少し昔の話になりますが、僕は16歳の時カナダにホームステイに出かけました。
高校生の時、初めての海外の体験でした。僕は今、41歳だから25年も前の光景です。
その時、30人の集団で行ったのですが、今も覚えている光景があります。
引率者に率いられて、カナダの入国審査で修学旅行然として、
「『ワッチュユアパーパス?』って聞かれたらなんて答えるんだっけ…?」なんて不安な気持ちで並んでいた僕の前を
同じ飛行機でカナダに入る日本人のカップルの男性が、個人旅行で彼女をエスコートし、颯爽と英語で受け答えしてゲートをパスしていきました。
僕は、「カッコいいなぁ…、いつかあんな風になれるだろうか…」と憧れたのを今でも覚えています。
あれから四半世紀、僕はカタコトだけど英語を話せるようになりました、かなりブロークンで時系列とか過去形の変化や言い回しはメチャクチャですが
英語圏なら一人で行って、居酒屋で飲んで、見知らぬ人とコミュニケートし酔っ払ってホテルで寝て二日酔いで帰ってくるくらいはたぶん大丈夫だと思います。
今回、僕は自分一人の為ではなく、大切な仲間と共に外国に行きました。
飛行機の手配、レンタカーの手配・運転、数百キロの移動、食事の支度、キャンプ場の手配・テントや寝袋の確保、キャンプでの食料。国立公園内の釣りのライセンスの所得から釣り場の選定、ポイントの決定。
皆に手伝ってもらいましたが、基本的に僕が決めさせてもらって行動していたと思います。
イエローストーンの自然を楽しみにしていたオオムラ。
夢にまで見ていた「カットスロート」という鱒を釣りたいタカノ。
二度目のアメリカで、自信を持ってドライブや一人で仕事の為に帰国して行ったマサ。
新鮮な目で素晴らしい写真を楽しそうに撮っていたゼキさん。

おとものノリスケ英語が堪能でとっても助かりました。

現地で、僕達の来るのを本当に楽しみにしていてくれるキヨミさんとディビッドが待っていてくれました。
(デイビットのバーベキュー本当に美味しかった!)
(キヨミさんのガイドで巡るリビングストンの街とイエローストーンの公園ツアーとサンドイッチのランチは本当に楽しくて楽しかったです)
(ディビッドとキヨミさんは、「イエローストーンホライゾンズ」という、完全日本語のガイドで巡る世界遺産イエローストーンのガイド&宿泊コテージを経営しています。ホームページはマツヤマデザインが作っています。今回、僕たちは彼らに再会し、お世話になりました、本当に親切で、面倒見が良くて、モンタナの自然を愛する信頼の置けるご夫婦です)
観光客という、安心して眺めるだけの物見湯算な立場だけでなく、工夫や苦労、我慢してもう一歩深く旅をする為に
キャンプやフライフィッシングをしました。
(ぬかるみに足がはまり、動けないオオムラ)
僕はフライフィッシングを通じて、「一人が釣るだけでなく、今日一緒に行ったメンバーが全員釣る、そうする事で、その日の夜の食事が、乾杯のビールが何倍も美味しくなる。その大切さ、その重要性」を学びました。
今回旅をした全員に、何とか小さいながらも毎日最低一匹は釣ってもらうことが出来ました。釣った魚は、とても小さな魚でした、今の僕の知識や技術、能力で出来る最大の魚でした。
大きなケガなどはありませんでしたが、トラブルやストレスはいくつもありました、苦労もかけました。それは、今の僕の実力なのだと思っています。

(フライフィッシング中、長袖ごしにオオムラの腕を襲った野生の蚊、コレ着てたのに、こんなに)

(コテージのキッチンで自炊)

いつか見た颯爽と旅するあの日本人に憧れて、自分だけは移動して、自分の為にだけはできるようになりました。
でも、それを大切な人にシェアする力は、とても頼りなくおぼろげで脆弱なものだと体感しました。
自分の為だけでなく、つちかったスキルを人の為に使うことが出来る人間になるにはまだ時間が掛かると思います。
努力します。
(イエローストーンの中を車で移動している車窓の動画)
僕は三度目のモンタナでしたが、言葉では言い表せない景色や「感覚」を一緒に行って感じることが出来たことはとても嬉しいことでした。
僕が、いくら言葉で「いいよ」、「行くと凄く空が広くて綺麗なんだ…」、「あの景色や青空を一度見てほしい」と、なんど伝えても、言葉では絶対伝わりきらないコトガラ。

イエローストーンの自然を見ると、日本の自然や山のコトもスゴク考えると思う…
それは、デザインをする上でとても大切な事だし、色や形だけでなく、ライフスタイルや本質的な体感でしか学ぶことが出来ないものだから。
でも、いくらイイ、と言っても、人は本当に飛行機に乗って、大切な時間を使ってくれなければそれは伝わりません。
忙しい仕事を詰め、家族や友人に迷惑をかけ、仲間は飛行機に乗り一緒に旅に出てくれました。
僕の言葉を信じてくれてありがとう。
楽しくてハードな旅を一緒にしてくれた友人に心から感謝しています。
(いつものジャンプですが)

(ココで)

(こう飛んでみました、見えますでしょうか)

PS.01 「タカノのコップ」
タカノは、年老いたお婆ちゃんと奥さん、可愛い双子のお父さん、家族の大黒柱。
キャンプやツアーの時に、家族の誰かの都合が悪くなると本人は不本意だけど行けなくなる事がよくありました。
今回もスタッフ全員、「タカノは無事に行けるだろうか…」と心配していました。一泊二泊ではなく5日間も外国にです。
しかし、今回はタカノの「絶対行く」という硬い決意と努力で、こうしてアメリカでマツヤマデザインのスタッフが終結することが出来ました。
コテージに帰って、草原の向こうにオオムラとタカノが手を振っていた時の感動は今も忘れることができません。
心配していたオオムラが一緒に渡米できた喜びを話して泣いてしまった姿を見て、僕も感慨深いものがありました。
その夜、デイビッドのバーベキューによる歓迎の宴の後、皆で「明日の釣りは釣れるだろうか?」という話しをしていました。
日本の渓流釣りは出来るタカノですが、初めての外国の釣り、慣れないフライフィッシング…。
しかも釣りが出来る時間は限られていますし、温度も高く厳しい状況です。
時差と14時間に渡る移動の疲れで酔いも回り、いつに無く饒舌なタカノが
日本から持ち込んだ自分のキャンプ用のコップを手に持って「大丈夫です!釣ります!」と不安をかき消すように言いました。
タカノは自分のコップを指差し「このコップは、残間さんが使ってくれたコップなんですっ!だから大切に持ってきたんです!大丈夫です絶対釣れますッ!」
残間さんは言わずと知れた「フライロッドとカメラを抱えて69カ国を旅した」辺境カメラマンであり、僕達のフライフィッシングの大先輩。
一同「…???、そのコップ残間さんのじゃなくて、タカノのコップじゃん…?」とキョトンとして、
詳しく話を聞いた所、いつぞやの北海道でのキャンプの際に、タカノのコップを残間さんが使って一晩飲んだ事があり、
そのコップをタカノは「僕のコップを残間さんが使ってくれた!」と感激して大切にしていたのです。
つまり、そのコップは、タカノのコップではあるけれど、「残間さんが使用したことのあるコップ」というものでした。
そして、今回タカノは、「このコップを持っていれば絶対釣れる!だってこのコップは残間さんが使ってくれたコップなんだ!」と
お護りのようにアメリカに持ち込んでいたのでした。
結果は、タカノは最後の最後の最終日、見事に念願のカットスロートを釣り上げて感動で震えていました。
タカノは【残間さんのコップ】をこれからも大切に大切にすると思います。
Posted by マツヤマ at 18:11│Comments(0)
│2014.07 アメリカ イエローストーン研修
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